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February 24, 2018

第8回 歯科用ハンドピースの使い回しによる感染事例はあるのか?


オフィスの清潔さと安全に特化した顕微鏡診療のお約束と証

【東京歯科医療安全・感染制御研究会】
医療の質は安全に比例いたします。

【東京歯科脳神経内分泌栄養咬合摂食嚥下口腔リハビリテーション研究会】
歯科用顕微鏡@歯科衛生士naomiです 

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歯科では、ハンドピースの滅菌が幾度も取り上げられます。

歯科は滅菌していないと目の敵のようにマスコミに騒がれますが、その結果、ハンドピースさえ滅菌していれば良いという風潮が蔓延し、メーカーやディーラーが儲かるだけで、歯科医療の感染管理の推進は全く進んでいません。それどころか、その分の経費を私たちが負担しなければならず過剰診療が危惧されます。(歯科では感染管理に見合った保険点数はついていません。今回点数の改定がありましたがそれでも十分とは言えません。)

私は、一人の科学者、歯科衛生士として、きちんとした歯科における感染制御を考えたい。
そういう思いで、今このシリーズを書いています。
(ちなみに当医院では患者さんに使用する全ての器具、器材を滅菌し、滅菌保証しています。滅菌できないものはディスポ。使用した器具の滅菌保証は全てブログで公開しています。)

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このスライドは、平成29年12月2日の第13回 首都圏滅菌管理研究会で発表したものです。

首都圏滅菌管理研究会発表


ここからご覧になられた方は、過去の記事もご覧ください。
第1回 歯科器材の洗浄・滅菌 その1
第2回 歯科用ハンドピースの洗浄・滅菌は何に従って行うか?
第3回 歯科用ハンドピースを洗浄・滅菌するためのガイドライン 
第4回 歯科用ハンドピースの洗浄・滅菌に関する通達(後半)
第5回 歯科用ハンドピースの洗浄・滅菌に関して問い合わせ結果
第6回 歯科用ハンドピースの洗浄・滅菌のメーカー検証について
第7回 歯科用ハンドピースのサックバックによる感染

今回からご覧になった方は、上記の第1回から7回までをご覧下さい

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第7回では歯科用ハンドピースのサックバックについて、各メーカーの回答を載せました。

結論。サックバック防止機構とはハンドピースが回転を停止した時に陰圧が生じ、口腔内の唾液や血液など、汚染物がハンドピース内部に吸引されるの(サックバック)を防ぐ機構。

【目的】
1. ハンドピース内部の汚染を防ぐ
2. ハンドピースの故障を防ぐ
3. 感染予防、感染事故防止、感染のリスクを減らす

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各メーカーの回答で、サックバック機構の目的1と2は理解できましたが、3については疑問が残ります。そこで、最後の質問としてサックバックによる感染について質問しました。
 
ハンドピースによる感染について質問
ハンドピースによる感染について、滅菌が適切に行われていないハンドピース(タービン、5倍速、エンジン、ストレート、超音波スケーラー、エアスケーラーなど)が原因で患者に感染をさせたという事例はご存知でしょうか。もしそのような事例があれば教えて下さい。

G社の回答です。
G社
G社からは、2015年の、オーストラリアのニュースを御回答頂きました。
 
歯科を受診した1万1000人にHIV感染の恐れ。
歯科を受診した最大1万1000人にHIVや肝炎ウイルスに接触した恐れがあると、当局が発表した。

日本語訳では、器具の消毒が不適切だったとなっていますが、 実際のサマリーでは Poorなinfection controlと書いてあります。

手指衛生が不十分だっかもしれませんし、手袋を使いまわしていたかもしれません。器具の消毒、滅菌が不十分だったかもしれませんし、これら全てがPoorなinfection controlではありませんか?

器具の消毒と限定されてはいません。

G社

結論として、侵襲的処置の後に血液媒介感染症であると判明した26名のうちの8名は、歯科治療以外に説明がつかないとされたが、 患者が治療中に感染したかどうかについては決定的では無いと結論づけています。

M社の回答です。
M社


M社の回答では国内での患者へ感染させたという事例は把握していないという事で、海外の事例として、 アメリカのキンバリー事件をご提示頂きました。

1991年キンバリー・バーガリスさん(当時20代前半のアメリカ人女性)が通院していた歯科医院でHIVに感染したことが明らかに なったというものです。

よく歯科の感染の話になるとこの事例が 取り上げられるのですが、

M社

これは、HIVに感染していた歯科医師からキンバリーさんへHIVが感染した可能性があるという結論がCDCから出ており、患者に使用した器具を別の患者に使用して起きた交差感染ではなく意図的に複数の患者に感染させたのではないかと考えられています。遺伝子検査によって、歯科医師と同じ型のHIVウイルスが検出されています。 

D・S社の回答です。

D・S社

日本における資料はなく、海外での事例をご提示頂きました。

G社と同じ2015年のオーストラリアの事例。これは先ほど結論を申し上げました。
その他に2014年の英国の事例、2013年の米国の事例をご提示頂きました。

まず英国の事例。2014年、ナショナルヘルスサービス(イギリスの国営の医療サービス事業)は ノッティンガムシャーの歯科患者が明らかな感染管理の違反に基づいてリコールされたと 報告書をまとめています。

このプレスリリースには、歯科治療を受けた4526人のうち5名に C型肝炎の感染が見つかったことと、 そして主に救済についての事が書かれています。

D・S社

具体的な感染経路についての記載はありませんが、感染がいつ、どのように、伝染するか特定することは必ずしも
可能ではないとあります。

D・S社

プレスリリースには詳しい事はありませんでしたが、当時の記事やニュースのインタビューなどでは、患者間でマスクを取り替えない、手を洗わない 、手袋を取り替えない、歯科機器を滅菌しないや、従業員の証言として使った手袋を箱に詰めて新しいものと見せかけて使用するなどがありました。

そして2013年の米国の事例。
米国オクラホマで、歯科治療においてC型肝炎が交差感染した事例です。  
D・S社

結論。
これは口腔外科の事例で、汚染されたバイアルの取り扱いが原因ではないかと結論づけています。

ハンドピースによる感染について回答まとめ1
つまり、厚労省やメーカー、マスコミは、歯科用ハンドピースの滅菌をしない事があたかも歯科の感染管理の問題のように煽り立てますが、今までご覧いただいたように、歯科用ハンドピースで患者が感染した事例の報告はありません。ハンドピースを滅菌する事を推奨しているメーカーでも感染の事例を把握していない。

歯科での感染はありますが、外科処置中の針や器具の扱いの感染であれば、それは歯科特有の感染ではありません。

冒頭にも書きましたが、ある一部の皆さんが、

歯科の感染管理イコール、歯科用ハンドピースの滅菌だと騒ぎ立てるので、歯科用ハンドピースさえ滅菌していれば良いという風潮となり、真の歯科における感染管理は全く進んでいません。

さらに一部の皆さんは、歯科用ハンドピースのサックバック防止機構の有無が問題だと騒ぎ立て、あたかもサックバックがついていないと感染するかのように、また歯科用ハンドピースの使い回しで感染するかのように吹聴しています。

どこへいっても、講師がハンドピースを滅菌しない事が問題だと言います
皆さんに問います。歯科の感染管理はハンドピースの滅菌が問題なのですか?

歯科用ハンドピースが原因その感染は確認されていない。つまり皆さんの大好きなエビデンス(科学的根拠)がない

エビデンスがない歯科用ハンドピースを問題にするよりも、医科と同じように、手指衛生を確実に行う事、手袋やマスクを患者ごとに取り替える事、PPEをきちんと着用する事、飛沫感染対策をきちんと行う事、そういう事の方が大切だと思いませんか

感染の事例がない1本10万円もする高価なハンドピースを何本も買うのなら、手袋を買って欲しい。毎回手袋を取り替えた方がいい。滅菌したハンドピースを前の患者さんに使った手袋で触った瞬間に滅菌は無駄になります...つまり今現在の歯科の感染管理のレベルでハンドピースを滅菌したところでまったっくの無駄です。
 
以前にも申し上げましたが、私は歯科用ハンドピースを滅菌しなくて良いとは言っていません。

歯科医療費には限りがあります。

日本の歯科医療費は欧米の10分の1以下です。
しかしながら、そのおかげで、国民の皆さんは、安く歯科治療を受けられているのです。

これは国策です。歯科医療従事者が悪いわけでもなく、予算は国が決める事で、私たち歯科医療従事者はその中で賄うしかない。自腹を切って患者さんを守る、それは美しい話かもしれません。

では問います。

あなたは自分の身を切って、人を助け続ける事が出来ますか?毎日、毎日、365日...
どうですか?1回ぐらいならできるかもしれませんね。いや、2回、いや3回...そうやって、今まで歯科医師の先生達は頑張ってきたのですよ。

でもどんどん歯科医療費は下げられて。歯科医師が歯科技工士の面倒を見る事はできなくなりました。さて次は私たち歯科衛生士でしょうね

これは国と国民、歯科医療従事者全ての人が日本の歯科医療をどういう方向性にしたいのかを考え、予算をつけなければ解決しない問題です。

私は歯科衛生士の仕事は向いてないと思っていたけど、25歳の時にこの仕事で食べて行こうと決めました。今となっては、患者さんに一生寄り添える他にはない職業が大好きです
だからこの業界のために頑張ろうと思っています。

人前に出るのは苦手で、組織に属するのも苦手だけど、ご縁があって歯科の話を依頼頂き、頑張ってこうやって話しをしています。

部外者が何もわからずにわかったようにこの業界の事を誹謗中傷するのはやめて下さい。誹謗中傷する前に、歯科業界の事、正しい歯科の感染制御の事をきちんと知って下さい。

歯科用ハンドピースが問題だと言っている方々に問いたいのです。この歯科医療費が押されられて、余裕がない現場で、今現在歯科が取り組むべき感染管理はハンドピースの滅菌なのか?と。
ほとんどハンドピースが問題だと言っている人は現場の人ではありません。

部外者、メーカー所属の歯科医療従事者、病院勤務の医療従事者または歯科医療従事者で病院で感染費用を賄ってもらえる、そんな人たちが講師となって歯科の感染の事を論じます
つまり利益相反のある方々や忖度です。
 
開業医の現場も理解して下さい。業界全体を見て下さい。自分の利益のためだけに吹聴するのはやめて下さい。

歯科はほとんどが開業医です。
そして、このブログを読んでいる皆さんも患者として開業医にかかるのですよ。。。

え?自分はかからない?年をとればわかります。今は大学病院に電車に乗って行っていても、いつか自分で歩けなくなった時、自分で歯医者を選べない時がきます。今、開業医の感染管理を考える事は現在もしくは未来の自分が受ける歯科医療の質を担保するという事です。

叫びすぎました開業医の私なんかが叫んでも相手にもされないけど。
でも相手にされないので、叫べるのですけどね。

5月の首都圏滅菌管理研究会で、また歯科の感染についてお話しさせて頂く機会を頂きました。

歯科用ハンドピースだけじゃない感染管理を是非一緒に考えにきて下さい


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mantachannel at 22:00│滅菌・消毒 
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